ダヴィンチの研究所

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紙を折る回数に関する研究

 

紙は何回まで折れるのか。

今回は結構理系要素の強めな話題の記事だ。というのも以前暇な時なんとなく自分でこの話題を試したくなったのでA4紙を折ることにしてみた。

よく聞く話としては「どんな紙でも8,9回までしか折ることができない」という。

こちらのyoutubeの動画

www.youtube.com

にあるように、43回折ると月に届くまでの距離になる、とトリビアの泉で紹介されたことは有名だ。

他にもYoutuberであるおるたなChannelがプレス機で実際どごまで折れるか挑戦していたりする。

www.youtube.com

これによればちゃんと折れていたのは8回まで。

実際に素手で私が挑戦してみた。

なお、折り方は1回前の折り目に対して直角に折る「直角折り」と、一方向に折る「巻物折り」の2種類がある。前者の方が上記の動画などでされていた折り方だ。より単純なモデルで議論したい、後述する公式を使って分析したいため後者の巻物折りで行く。

まずはA4の紙1枚を用意する。

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3回目

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6回目

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のように6回目で限界。写真ではよく見えないが、紙の厚さの大きさ的にこの時点でもう一回折るのは困難だ。6回目はペンチなどを使って無理やり折ったが、折れているかも怪しいくらいである。

 

とはいえ、A4紙で今回はこの結果だったの過ぎない。もっと大きい紙ならいけるのでは?という疑問も生じるだろう。

厚さtの紙を一方向へn回折った時、最低限必要な紙の長さ{Ln}を求める公式がある(なお、「直角折り」の方も導出したかったがこちらは2次元上になるため求めるのはかなり難しく割愛する)。 

{L_n= \frac{\pi t}{6}(2^n+4)(2^n-1)}

この公式はBritney Gallivan氏が2001年頃求めたもので、Britney Gallivan - Wikipediaにも載っている。彼女は1200mのトイレットペーパーを12回折ることに成功したそうだ。1200mあっても12回しか折れないのか?!

まずはこの式を導出してみよう。

巻物折りの場合、1次元で考えられるため簡単である。 1回紙を折ると、以下の図のように折り目の部分の円弧の長さ分だけ紙の長さが削られていく。

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厚さt長さLの紙が折られて、厚さ2t長さL/2+長さ{\pi t}の円弧を持つ図形へと変化した。この円弧の長さより紙の長さLが短いと、理論的には折ることができない。故に、{L_1 = \pi t}であるということができるだろう。厚さ0.09mmのA4紙に対しては0.28mmよりも短い紙では折ることができない。まず0.28mmよりも我々が扱う紙は長いため1回も折れないという紙はほぼ身近には存在しないだろう。

 

さて、2回折ると少し様子が変わる。

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先ほどの円弧がついたまま折られるため上の図のようになる。

円弧部分の長さの合計は{L_2 = \pi t + \pi t(1+2)}、故に{L_2 = 4 \pi t}です。

必要な長さは前の4倍となった。

さらに3回目となると...

 

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厚さ8t、長さL/8の厚紙となる。円弧が実はいくつかついている。先ほどまでと同様に計算すると...

{L_3 = 4 \pi t + \pi t(1+2+3+4)=14\pi t}となる。故に、1回目の14倍。折る度にどんどん必要な紙の大きさは大きくなっていく。

ちなみに4回目は同様にして

{L_4 = 14 \pi t + \pi t(1+2+3+4+5+6+7+8)=50\pi t}となる。

 

この傾向から次の漸化式が成り立つ。

{L_1=\pi t}

{L_{n+1}=Ln + \Sigma^{2^n}_{m=1} m \pi t}

この漸化式から最初に登場したこの式、{L_n= \frac{\pi t}{6}(2^n+4)(2^n-1)}が類推できる。よくある数列の問題と同じだが、数学的帰納法を用いてこれを証明すれば導出できたことになる。

まず、n=1の時だが、代入すれば成立することは明らか。{L_1 = \pi t}

次に、n=kが成立するとみなして、{L_{k+1}}について

{L_{k+1}=L_k+\Sigma^{2^k}_{m=1}m \pi t} 

{=\frac{\pi t}{6} (2^k+4)(2^k-1) + \pi t \frac{2^k(2^k+1)}{2}}

{=\frac{\pi t}{6} (2^{2k} +3*2^k -4 + 3*2^{2k} + 3*2^k)}

{=\frac{\pi t}{6} (2^{2k}*4 + 3*2^{k+1}-4)}

{=\frac{\pi t}{6}(2^{k+1}+4)(2^{k+1}-1)}

となり、n=k+1の時でも成り立つ。故に、当初の式は証明された。

 

さて、本式{L_n= \frac{\pi t}{6}(2^n+4)(2^n-1)}を用いてA4の紙を用いると何回まで折れるのか類推してみよう。

A4紙の厚さはだいたい0.09mmくらい。これを先の式に代入すれば、

1回折ると{2.8×10^{-4}}m=0.28mm 

2回折ると{1.1×10^{-3}}m=1.1mm

3回折ると{3.9×10^{-3}}m=3.9mm

4回折ると{1.4×10^{-2}}m=14mm

5回折ると{5.6×10^{-2}}m=52mm

6回折ると{2.0×10^{-1}}m=200mm

7回折ると789mm

8回折ると3120mm=3.12m!!

 急に8回目で上がる。横軸を折る回数にして縦軸を必要な紙の長さとすれば以下のようなグラフで表せる。桁違いである。

地球ー月間を超えるくらいのサイズの紙でなければ22回紙を折ることはできない。ちなみに、冒頭で紹介した、12回紙を折るのに必要な紙の大きさの理論値は791mなので、1200mの紙でそれだけ折れるのは理論通り。13回目は3100m以上必要だ。つまり日本列島サイズの紙を用意しても折れるのはせいぜい13回となる。

 

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また、紙を折る回数をnとすればその紙の厚みは{2^n}倍となっていく。

10回折れば1024倍であるため厚さ0.09mmでも92.16mmとなる。

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ちなみに22回折ると377m=東京タワーより少し高いくらいの厚みになるが、ここまで紙を折るためには地球ー月間くらいの長さの紙が必要だ。

冒頭のトリビアの泉で紹介されていたように43回折ればたしかに月までの距離をはるかに超えて79万kmとなる。

しかしながら、43回もおるためには少なくとも385光年の長さの紙が必要。

どんどん折っていくと上記のグラフのように急激に厚みは大きくなり、50回くらいで木星に届く。

このように、大変途方もない話となってしまう。

 

地球上で作れる紙の大きさはせいぜい40000mくらいであるためそれくらい巨大な紙を用意してもせいぜい14回しか折ることはできない。

今回は巻物折りで紙を折っていったときにどこまで折れるのか、どのくらいの紙が理論的に必要なのかを書き記した。最も身近なA4紙では6回が限界である。

 

普通の折り方である、直角折りでは先ほどのような式を導出するのが困難である。2次元であるため、先ほどの円弧を折り曲げる際に同様の考え方では問題が生じる。

何回が限界なのかは式を導出できなかったため不明だが、おそらく8回程度だと思われる。巻物折りと大して差はないと思われるが...