JAXA 就活1
1.はじめに
私はつい最近まで就活をしていたが、密かにチャレンジしていた企業がある。
「JAXA」である。日本唯一の宇宙航空の研究開発機関である。
理系なら憧れを抱いたことがある人もいるんではないだろうか。
私はやや憧れがあって中学の頃の将来の夢なんかにJAXAとか書いた気がする。
しかしどうせ行けないだろう、と思い込んでいたため就活の時は民間の大企業しか考えていなかった。
とはいえエントリーくらいはしてみるか、と思い立って技術系で応募した。採用されるなら修士課程の場合、平均的に例年25名程度しか採用されない、実に狭き門である。
そして、ESが通過し、1次、2次と通過してついに最終まで進んでいたのである...
ところが!!
残念ながらつい最近、お祈りメールが来た!!
うおおおおお!
ダメ元だとはいえ、最終まで行って落選するとなかなか悲しい。
この私を採用しないとはこの機構、後悔するぞ...w
私は総力を尽くしたつもりだったが敗北した要因もなんとなく分かる気もする。最終まで進むことができてとりあえずよかった。
そこで、JAXAへ就職したいと思っている大学生・大学院生も多いと思うので、私の選考体験を本ブログにまとめてみたいと思う。
私も面接の前なんかは選考体験記をネット上で探したものだが。技術系の最終選考までの体験記はせいぜい2件しか見つけられなかった。私の経験が誰かの夢の実現に役立ててくれれば、と思う。
というわけで今回はそのシリーズの第一弾。
「ES・適性検査」である。
この2つの他、説明会の様子や企業研究も載せておこう。
2.解禁後の動き
3月1日に就活が解禁され、すぐにプレエントリーし、速攻予約してまず私は説明会に出席した。3/6のことである。
まずはムービーを閲覧し、企業説明を受け、その後は職員らと座談会を行う。
JAXAは全部で1500名程度の職員が在籍し、予算は約1500億円である。NASAが2兆円ほどであることを考えると、ずいぶんな差である。これほど差があるのか...と驚く。
JAXAは技術系の場合、
・有人宇宙技術部門;宇宙ステーションの宇宙飛行士の装備品、生体管理、医療関係、将来の有人探査計画
・宇宙科学;天体、宇宙の起源、隕石、観測など宇宙の科学全般
・航空技術部門部門;航空機の設計・開発・計画。次世代超音速旅客機の計画など。ただ世界ではボーイング社が圧倒的に高い民間・軍用機製造技術を持つため、それには及ばない説もある。
・研究開発部門;多様な研究開発。基礎から応用まで。輸送技術などから宇宙太陽光発電とかも。宇宙エレベーターはやっていない。
・宇宙探査部門;「はやぶさ」など惑星探査機関連
・第二宇宙技術部門;忘れた(笑)
の部門に分かれる。
①専門能力、②提案力、➂自主性
の3点を重視ポイント、としているらしい。
技術系職員と座談会を行ったが、専攻は航空宇宙・機械工学・電気系など機電系しかいない印象。私は工学よりではあるが物理系であったため、本当に選考通るのかな?とか思ったが、職員に尋ねると、物理でも大丈夫、だという。
一応、「専攻による差別」は行っていないらしく、「その専攻をJAXAの何に役立てることができるか」を見られているらしい。まあこれは後で選考していく中で知ったのだが、たぶんこういう意図があった。
質問すると名前を職員の方がメモしていたので、「質問した方がいいかも!」
職員の方はなんかコンテストの優勝経験があったり、自分で部活を立ち上げたり、特殊な技能資格を保有していたりと、学歴や成績だけでなく何かに秀でてそうな人が多かった印象がある。うーん、この話を聞いた時点で私は厳しいかも、とは思った。私はサークルの幹部経験はあるが、その程度である。
以下に座談会で話された職員の話・質疑応答・コメントとかを適当に書いておこう
・意外とコミュ力高い人多い
・役所みたいな雰囲気だと思っていたが研究開発の雰囲気はやはり強い
・アカデミックの人・教授とかに助言をもらいに行くこともあるが、そういう人はとがってて大変
・入社3-4年の若手が多め
・メーカーの人と関わる機会多い(たぶんM重工、M電機とかかな)
・勤務地は調布、筑波、相模原、仙台、鹿児島、種子島など。だいたい筑波と相模原っぽい。勤務地の希望はわりと柔軟
・5年ごとに部署変え
・学士でもたまに入る人いる
・有人系はスーツ、相模原は私服勤務が多い
・博士を入社後取ることも可能
・1次面接はなごやか、2次3次は厳しめ、「一番ではなく二番にやりたいことは?」という質問が印象的だったらしい。「もし宇宙じゃないなら何をやりたいか」とかも聞かれたとか。
・宇宙飛行士にも会うことができる
とかいう感じ。私のメモ帳に記録されている限りでは。
3.近年の宇宙事情
さて、選考情報を話す前に、まずは世界と日本の宇宙業界の事情について企業・業界研究?として話しておきたい。こういう事情はJAXAを受けるなら知っているべきだと思うが。まあ結構長文なので飛ばしてもらってもかまわない。私の知識をかけるだけ書いた。
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さて、今までの時代は「宇宙」はビジネスとは一切関係なく、米露冷戦下の技術競争・「宇宙」という謎の空間に対する調査が目的であった。そのため、アメリカ合衆国NASAをはじめとしてヨーロッパのESA、ロシア連邦のロス・コスモス、日本ではJAXAなど国の研究機関が中心的に携わってきた。しかし、近年は事情が一変しつつある。
1990年代は、冷戦終結、チャレンジャー号・コロンビア号事故に伴うスペースシャトルの信頼失墜と廃止、また宇宙予算の低減などによって宇宙開発は停滞したかに見えた。
2000年代は「宇宙の先を探査する」よりも「無重力空間における人間の生活」をまず重視し振り返る体制へと変化した。というのも米露冷戦が終結することによってロシアが保有し続けてきた「宇宙ステーション」技術が西側諸国にも共有されるようになったのだ。映画「アルマゲドン」でもロシアの宇宙ステーションが出てくるが、そう、実は冷戦後半期はアメリカ合衆国がスペースシャトルによる宇宙への探査を重視する中、ロシアは宇宙ステーション技術を比較的発展させており、宇宙ステーション「ミール」などは有名である(すでに寿命を迎え大気圏突入により破棄されている。ロシアも「ブラン」というロシア版スペースシャトル計画を持っていたが、ソ連情勢の悪化に伴って実現は夢に消えた)。
これが現在のISS、「国際宇宙ステーション(International Space Station)」の発端である。そんなISSも10余年の歳月を経て2011年に完成した。つい最近、金井宇宙飛行士が地球へ帰還した。このように日本からも宇宙飛行士が隔年くらいでISSへ行っている。これは日本がISS建設にあたって技術供与をしてきたからだ。ISSの建設には実に多数の国が関わっており、中でも日本は物資の輸送船「こうのとり」などで資材供給を支援してきた。おかげで、現在もISS居住施設や実験施設「きぼう」などを日本が利用できる。日本はH-1, H-2A, H-2Bと輸送ロケットを発展させてきて、近年は打ち上げ実績は実はかなり良く、ここ最近30回の打ち上げでは95%以上の成功率を誇るという(とはいえ、人を載せることを考えると95%でもまだ危険ではあるが)。
さて、2010年以降はスペースシャトルが2011年退役して以来、「国が主導する」
よりも「民間が主導すべき」という機運が高まる。2018年現在に至るまで、そしてこれからもアメリカ合衆国では民間が力をつけてくるだろう。話題を呼んだのはつい最近、今年2018年2月6日、イーロン・マスク氏率いる「SpaceX」が実行した「ファルコンベビー」打ち上げ。自分の保有する「テスラ車」を宇宙空間に打ち上げるという大胆な計画を実行し、成功した。その車は今も宇宙を彷徨っている。しかも4月には帰還型ロケット「ファルコン9」が打ち上げからの帰還に成功している。アメリカ合衆国主導の支援・NASAの技術支援もあってか、着実に民間企業が発展している。この他にはアメリカ合衆国には多数のベンチャー企業が存在している。
日本ではどうか。ロケットの製造はM重工が積極的に行ってきたものの、設計・開発はJAXAに依存している部分も多かった。しかし、今後JAXAはM重工に大部分の設計
開発を委託していくという。H-2Bのさらなる大容量化・低コスト化を目指したH-3ロケットの開発は、その多くをM重工に委託されている。2020年頃打ち上げ予定らしい。
ベンチャーはどうか。ほりえもん、こと堀江貴文氏が出資する「インターステラテクノロジーズ」が奮闘しているものの、4月の打ち上げは失敗。まだ宇宙空間へ到達したことはない。また、この他には宇宙開発に名乗りを上げている企業は見当たらない。アメリカとは大きな違いがある。
今後、JAXAは民間の力をつけていくためにも率先的な技術供与・民間支援を行っていくと予測される。そのため、メーカーへの出向の機会も増える。また、事業としての戦略も「宇宙空間を探査していく」よりも「ビジネスとして宇宙をどう活用できるか」の方面にシフトしていくはずだ。日本政府も宇宙基本法を2008年に制定させて以来、民間企業等の団体がロケット等の飛翔体を打ち上げる基準を緩めにし、打ち上げを積極的にできる環境を作ろうとしている。
故に、JAXAの「宇宙機関」としての地位は低下していき、民間が主体的になっていく可能性は考えられる。とはいえ、当分は必須とされる存在であるだろうし、「研究機関」としてその「技術」を供給していく存在、となるかもしれない。つまり、選考においては「宇宙に夢があるから」「未知なるものを切り開いていきたいから」のような志望理由は重視されず、「宇宙を用いてあなたは何がしたいのか、できるのか」を騙る必要がある、と類推できる。実際、私は説明会や選考を通してそのような印象を受けた。
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4.ES・適性検査
さて、では選考の話に移ろう。
ESの締め切りは3/27必着であり、私は他社のES等も忙しく、ギリギリ前日に速達で提出した。受領されると、「受領確認」のメールが1日以内に来る。安心である。
私は先の説明会以外は特に職員と会ったりはしていない。OB訪問はJAXA側からは応じておらず、大学側もOB名簿を公開していなかった。最近は個人情報の関係で企業によっては公開を控えることがある。身近な先輩や知り合いにもJAXAに内定した人など聞いたことがなく、OB訪問はしたくてもできなかった。一応、高校の頃、授業の一環で筑波センターに訪問したことはある。
このような状況の中、私は上記のような宇宙業界の分析をし(ていうかわりと興味が昔からあったので知っていた)、志望動機などを考えた。
ESの設問・私の答えは以下のような感じである。
・志望動機 ;「夢」、すなわち壮大な目標を長期的に抱えることができる+科学技術によって人類の発展に貢献できる+説明会や昔の筑波見学で情熱を感じた
・研究内容
・なぜテーマを選んだか;自分で装置の設計開発ができる+世界初の成果を残せる可能性があるから
・趣味、特技
・サークル・クラブ
・20年後のJAXAで実現したいこと+その時のあなたの役割;宇宙開発・宇宙利用拡大を進めていくためには宇宙を身近にすることが重要。そのためにも宇宙へ行きやすくすることが必要。故に安全・確実・大容量な輸送船の設計開発をしたい
役割は研究開発のリーダーをしたい、目標・進路を決め、徹底的に取り組む
ESの内容自体はいたってシンプル。これで何を見ているのだろうか。分からないが、とりあえず志望動機と将来やりたいこと の2点を重視すればよい。私は物理系専攻なのでロケットなどは微塵もかかわったことがない。だが、説明会では「専攻に関係ない」というから私はその言葉にかけてみることにした。本当にやってみたかったのはやはりそっち系だったので、輸送機開発を推したのだ。宇宙業界の方針とも合っている、と私は思っていた。今思うと、この「推す分野」はこの時点で明確に考えておくべき!!
ここで決めるともうあとに引けなくなる。私は安易に専門と全く異なる「輸送機開発」を推してしまったが、もう少し考えるべきだった。ESではあれを推してたのに、面接ではこれ、みたいだと一貫性がないと思われる。そのため、ESの時点で基本的には「やりたいこと」は決めてしまわねばならない。私は物理系なので「電気電子系」の内容ならなんとかかする?かもしれないのでそれを推すべきだったかもしれない。だが、まあ私はロマンを求めたので後悔していない。
もし受験する諸君がいるのならば、「専攻はたしかに選考とは関係ない。だが専攻及び専門内容をどう「やりたいこと」に活かせるのか明確にしないとダメである。しかもESの時点で!」とういうことを肝に銘じてほしい。
私は面接において「どう活かすのか?」という質問には「研究で培った徹底的に取り組む力」「分析力・問題解決力」を活かす、どんなテーマで扱えると推しまくって2次面接までは突破できた。だが、最終でやられたのは、専門性をどう活かせるのか、技術的にも言える必要があったのかもしれない。まあ、「専攻関係ないって言ってた、そんなの知らね―yo!!」って感じではあるのが本音だが笑
とりあえずこれでESは通過した。結果連絡は2週間後と遅い。確か4/13だった。気長に待とう。この間は他社の選考に総力を尽くすのだ。
そして、適性検査。1次面接を受けた後、ネット上で受けて、合わせて結果が来る感じ。1次面接は次回の記事で。
適性検査は、計数、言語、英語。形式は玉手箱形式。
計数はなんと計算問題のみ!電卓片手に頑張れば終わる。素早さ・正確さを見ているのかな。
言語は論理的に正しい・正しくないとかを選ぶやつ。これも3月の時点で何社か大企業の玉手箱受験してればだいたい問題覚えてたりするので大丈夫。
英語はまず終わらないほど分量がある。玉手箱に英語を実施している大企業はN産・H立くらいしかないため、その辺で対策できるかどうかだろう。
適性検査の内容より1次面接がしっかり見られていると思うのでそっちで頑張るべし。
適性検査対策なら以下の問題集もおススメ!(画像にクリックすると詳細に飛ぶ)
今回はこれで以上である。
気が向いたらまた続きの選考も記してみる。2020年卒以降はもしこのブログに気づいたら参考にしてみてほしい(このブログが検索にかかるかは相当怪しいが笑)。
JAXAを受けたいって人が身近にいたら是非本記事を勧めてほしい、参考になるだろう。