ダヴィンチの研究所

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レーザー兵器に関する研究

 

 

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レーザー兵器のイメージ

1.レーザー兵器の利点

 レーザー兵器といえば、諸君はスターウォーズの世界を思い描くだろう。銃器に代わる未来的な武器として数多くのSFで描かれてきた。実際のところ、銃火器に大きく勝る点としてはその”弾”の速度にあるといえるだろう。
 光速は時速約30万km, 正確には299792458m/sである。物理学の世界では度々3 \times 10^8 m/sで簡略化される。照準を合わせた瞬間に標的へ到達するのである。これは実際恐るべきことで、細かい弾道計算を必要とせずに近づくもの全てに照射することが可能である。

 また、よく知られる利点として低コストであることが知られる。レーザー兵器の主な用途は駆逐艦や地上拠点を砲弾やミサイルの攻撃から防衛することにある(果ては核ミサイルの撃墜さえ可能であると私は思っている)。現在、イージス艦の近接火器の防衛システムとして実用化されているのがCIWS(Close In Weapon System)である。アメリカ合衆国で採用されているのはM61バルカンであり、その弾薬である20 imes 102mm弾は1発当たり7万円程度するらしい(調べてみたが正確に価格が掲載されている文献は発見できなかった、一応次のサイトを参照

http://www.geocities.jp/kanabow11/price/)。

 

CIWSは毎分4500発連射できるため、仮に1分間射撃した場合、4500発、すなわち3億円程度消費する。対して、レーザー兵器の場合、CNNの記事(https://www.cnn.co.jp/usa/35104351-2.html)によれば1発当たり1ドル以下だということである(はたして連続波発振であろうレーザーにおける1発がどういう意味合いかは分からないが、私はミサイルなどを撃墜するのに照射する時間分に消費する電力代とでも解釈している)。しかし、気になるのは果たして照射されたとして、どの程度の威力を持つのか?である。私も天空の城ラピュタに現れるロボットのレーザー光線などは「すごい!」と思ったものである。

 

 2.レーザー兵器の破壊力

 さて、レーザーを照射された場合、物体はどうなるのか。兵器として十分な破壊力を持ち合わせるのか。近年はアメリカ軍はLaWs(Laser Weapon System)と呼ばれるレーザー兵器の研究開発に躍起になっており、Wikipediaによれば105kW程度ですでに試験されたことがあるという。先ほどのCNNの記事によればドローンを瞬時に撃墜したとの報告が見られる。今後は300kWへの増加が計画されているという。

 果たしてこの300kWという数値。ぱっと聞いてもどの程度の威力かは想像できない。私は15Wクラスのレーザー(連続波発振, ビーム直径3mm)に触れたことがあるが、触れるとたまらず反射で指を避けてしまうほどである。感じるのは強力な熱。おそらく触れ続ければ確実に火傷を負うだろうと思うほどである。ビーム密度(出力/ビーム断面積)によっても感じ方は異なるであろうが15Wでこの威力である。これが300kWともなればどの程度の破壊効果をもたらすか。

 Wとは単位時間あたりに何Jのエネルギーがかかっているかを表す。 つまり1秒間に300kJかかるということだ。 300kJとは、時速60kmの2tトラックが衝突する時の運動エネルギーに等しい。 鉄の融解点は1538度, 常温25度, 比熱を0.435とすれば\Delta Q = mc\Delta Tより、1000gの鉄を1500K上昇させるには652kJ必要である。すなわち1kgの鉄の塊といえど2秒照射すればたちまち融解してしまう。なお、光と熱の変換効率を考慮していないため、実際はこの3倍以上はかかると思われる(それでも6-7秒)。 ミサイルの表面は装甲などなく、おそらくアルミ合金が2mm程度塗られているに過ぎない。100kWクラスでも1-2秒とかからず表面を打ち抜き、内部の電子回路や誘導装置を滅却するだろう。このように、すでに現在の時点で砲弾、ミサイルの撃墜のためには十分な威力を持っている。戦闘機の撃墜さえ可能だろう。しかし、まだ大型であることから当分は小型化が可能になるまで駆逐艦への搭載が目指されるはずである。精度を向上させて核兵器の確実な撃墜が可能となれば、実質核兵器の無力化が実現し、再び世界のパワーバランスが変化する可能性を秘めている。

 しかし、それほどの可能性を持ちながらもなぜいまだにレーザー兵器が実現されないかといえば、複数の理由がある。ここでは大きく3点を挙げてみたいと思う。

 

3.兵器化の難点

 ・大気による影響

 前項の出力の問題はすでに述べた通り、解決しつつある。しかし、地球上で使用する場合、大気が存在するためレーザー光は伝搬に伴って大きく減衰してしまう。そのため、射程距離が限定されかねない。

 またそれだけでなく、大気中をレーザーが伝搬する場合、大気が暖められて膨張することによって大気の密度が小さくなり、レーザー光は屈折してしまう。これブルーミング現象と呼ばれ、レーザーのコリメートに影響を及ぼす。

 

・システムの大型化

 レーザーというものは基本的にその動力源は電力である。電気と光は変換することができる。だが、高出力のレーザーには基本的に大きな電力が必要であり、電力供給に伴って必要な冷却装置のことも考えるとシステムが大型化しやすい。兵器において、大型化による重量の増加、ないしは機動性の低下は現代戦において致命的な欠点になりかねない。

 これらの課題はあるもののレーザー兵器は近年米軍を中心に目覚ましい発展を遂げ、確実に現実のものになろうとしている。21世紀に現れる恐るべき新兵器として私はAI兵器とレーザー兵器を考えている。

 

4.レーザー兵器の歴史

 軍事的にはこれらレーザー兵器は指向性エネルギー兵器(DEW; Directed-Energy Weapon)と呼ばれ、従来の運動エネルギーによる破壊ではなく、熱エネルギーを直接照射することによる破壊を目的とする新兵器である。
 初期のもとしては1996年アメリカとイスラエルとの協定によってはじめて開発が始まったとされる戦術高エネルギーレーザー(THEL; Tactical High-Energy Laser)が知られる。THELは1998年に発射試験を行い、ロケット弾や砲弾の撃墜に何度か成功しているようである。

 

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          THEL(Tactical High-Energy Laser)

 最近2010年以後に注目されるのが米軍による「LaWs(Laser Weapon System)」である(先ほども紹介した)。これまで何度か発射試験を行い、無人機、小型船程度を2-3秒で撃墜する映像が公開されている。一見、アニメや映画に登場する派手なレーザー兵器と比べると地味な印象を受けるが、2-3秒で金属を溶解させて破壊するという威力は驚異的である。大型船や戦車に対しては有効打とならなくとも、装甲の薄い戦闘機や戦闘ヘリ、特に飛来する敵ミサイル(ないしは核ミサイル)を撃墜するには十分な威力といえる。現代の電子戦装備であれば、たとえ標的が高速で飛行していたとしてもレーザー光線を短時間標的に照射し続けることは比較的容易である。
 

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        LaWs(Laser Weapon System)